福岡カルチャーはなぜアツい?キーマンが語る、脱都心的スタイル

Why is Fukuoka Culture Attractive?

近年、福岡カルチャーの動きが活発だ。
福岡在住ながら日本全国にファンを抱えるグラフィティアーティストやイラストレーター、
ミュージシャンの存在、さらには日本国内外とのハブとなるカフェやギャラリー、
アートスペースの誕生など、枚挙にいとまがない。その影響力は、日本全国に広がっている。 なぜ、今こんなにも福岡がアツいのか。その火付け役として重要な役割を担っているのは、
福岡のユニークな「ショップ」たちの存在だ。
そこで今回、アパレルショップ『Directors』の藤戸剛さん、文具メーカー『HIGHTIDE』の
棟廣祐一さん、そして『NO COFFEE』の佐藤慎介さんにお集まりいただき、話を伺った。

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Interview-インタビュー-

HereNow FUKUOKAで展開した前編に続き、場を福岡市・薬院にある「つどい」に移し、懇談を続ける。FUJITO/Directorsのショップオーナーでありデザイナーの藤戸さん、HIGHTIDEの取締役を務める棟廣さん、NO COFFEEのオーナーである佐藤さんが行きつけというこの「つどい」。三人に限らず、刺激を求める人々に愛されるこの店を語らずして、福岡のカルチャーについて考えることはできない。それくらいに深い魅力が、ここにはある。

HereNow FUKUOKA前編はこちらから

とは店主・葉山さん(通称ギュウさん)が営む麺酒場。現在の場所(薬院)に移転する前は替玉発祥の地として知られる長浜で営業していた。そう、実は藤戸さんが営むDirectorsがまだ長浜にあった時代、同じ通り沿い、ほぼ対面というくらいの距離。長浜といえば替玉発祥というくらいなので、豚骨ラーメンの聖地でもあるが、ギュウさんはそれをあえて封印し、牛肉やアサリをたっぷり盛り付けた独創的な中華そばを提供し、話題を集めていた。現在の場所に移転後は、メニューを一新し、某有名なカップ麺をオマージュした、さらに独自性が高まった麺料理を用意。「●いきつね」「U●O」といったマスターピースを見事に再現し、来店する人々の度肝を抜き続けている。

壁一面に張り巡らせたレトロで味わい深いポスターやチラシ、
所々に散見される不思議な一言、
メニューの名前は「アレ」「ソレ」というようにお茶を濁してあり、
他では体感できない“ヤバさ”が凝縮している。
この店もまた、店主・ギュウさんの愛される個性あってこその空間。
強い個であるからこそ、惹かれ合うのだと思う。

——せっかくなので、まずは乾杯で!ところでみなさんどれくらいの頻度で「つどい」に来ているんですか。
  • 藤戸:それこそ長浜時代は、ほぼ毎日、というくらいに通っとったねえ。アサリそば、ギュウそば、どっちも美味かったなあ。薬院に移ってからは、その時ほどではなかけど、定期的に行く感じやね。
  • 棟廣:ぼくは、そうだなあ、平均すると月1くらいでしょうか。東京など、県外からゲストが来て、夜の席にお付き合いする際には「つどい」へお連れしています。本当に喜ばれるんですよね。だから、重なる時は重なって、月によっては3度、4度と来店していますよ。
  • 佐藤:棟廣さんと同じ感じですね。ぼくも月に一度くらいが基本で、あとは県外から来た人がくれば必ず寄りますかね。
  • 藤戸:福岡の人はもちろんっちゃけど、遠くから来てくれた方々をお連れするにはばっちりよね。他の地域にこういう場所ってないっちゃなか。
  • 佐藤:もしかしたら東京にもあるのかもしれないですが、ぼくは知らないですね。あるなら教えてほしいくらいです。
——お三方を含め、地元・福岡でも、ちょっとトンガっている人が集っているようなイメージがあります。
  • 佐藤:確かにそれはそうかも。自分自身、気になりながらもちょっとエッジの立った人が多そうだなと、少し尻込みしていた節はありますから。
  • 棟廣:すごくわかります。一度入ると、全然そんな気負った感じとかないんですけどね。
  • 藤戸:そうかあ。おいの場合、19歳からギュウちゃんのことを知っとるけんが、そういう抵抗のようなものはなかったかな。もう、仲間意識が強すぎて、客観的に見きらんもん。もはや、まともな意見は出らんよね。
  • 棟廣:それくらいのお付き合いの長さだと、そうなりますよね。ギュウさんって元々整体師で、それが今や、飲食店。そんな転機を見ていて、どう思われていたんですか。
  • 藤戸:もこしの大将(福岡でも数少ないラーメン部門におけるミシュランガイド福岡の掲載店である「麺道はなもこし」店主・廣畑さん)に協力を得て、一緒に麺の店をやるという話を聞いた時には「おお!」ってなったよ。あの2人こそ、生まれも育ちも福岡という、福岡ローカルのど真ん中やもんね。そういう人たちが元気なのは、街としても良いことよね、きっと。
  • 佐藤:長浜時代も今と同じように、カルチャー感が全開だったんですか。
  • 藤戸:前の店は元々喫茶店だった場所を利用しとって、昭和レトロな気配はあったんよね。延長線上にはあったけど、こうしてこの店を見ていると、ここまでの濃度が表現されている感じではなかったかな。
  • 棟廣:この場所に移って、さらに進化したような?
  • 藤戸:そうやね。19の頃から身にまとっていた濃ゆい感じはそのままなんやけど。当時、すでに何百枚というレコードのコレクションがあったしね。音楽をはじめ、そういったアンダーカルチャーのものが大好物で、それは変わらず、どんどん深くなっているような感じがする。ギュウちゃん自体のキャラクターは、突然変異ではないけんね。そして味にもそういう人となりが出とるっちゃん。麺を食べると、ギュウちゃんの味がするんよね。本当に。
  • 佐藤:この人にしか作れないような味ということですよね。
  • 藤戸:そうそう、焼き鳥屋だったら焼いてる大将の味がするやん。そういう味がしっかり出てい るのがすごいと思う。
  • 棟廣:真剣にやっていることが伝わってくるんですよね。人を喜ばせたいというのかな。そんな気持ちが滲み出ているような感じがします。例えばポスターも、ここに貼れば座った人の目の間に来るとか、キャッチーな一言も散りばめてあって、そういうサービス精神のようなものを受け取ります。
  • 佐藤:一つひとつ、細かなところまで考えているんだろうなという感覚は共感できます。
  • 藤戸:トラップのをバーンと発散できる場所を得たような、外に出せる術を知ってしまったんやろうな。
  • 佐藤:ギュウさんのようなアングラ感を備えた人が、同じ趣味嗜好をしているような、つまり濃い人に対してボールを投げているのに、最近だと、それがマスにまで届いて、広がっているというパラドックスを感じますね。
  • 藤戸:ああ、その感覚はわかるなあ。結局、ポスターのトーン、空間演出の仕方、店主の人柄とキャラクター、そしてメニュー。料理の打ち出し方から味に至るまで、一つひとつを切り取ると、どれもハイスペックなんよね。でも、それをそう感じさせず、異次元でまとまっているというバランス感覚がスゴいところっちゃなか。そういう意味では、NO COFFEEもそうじゃない。おいは佐藤さんの店は洋服屋に近い感覚、いわゆるセレクトショップという感覚で見てますよ。

セレクトショップという言葉に佐藤さんが反応する。
切り口が変わると、コーヒースタンドだと思えていた場所が、
セレクトショップであると思えてくる。
「つどい」のことを語るほどに、自然と自身の店、
ブランドと比べてどうかと思考が活発に動き出したようだ。
良い店では、不思議とこういう化学変化が起こりやすい。

  • 佐藤:なるほど、セレクトショップですか。
  • 藤戸:そうそう、コーヒーという誰もが飲めるものが入口にあって、その先に丁寧にセレクトされたグッズが置かれ、空間における的確な表現がなされていて、純然たるセレクトショップだと思うなあ。逆に言うと、今って本来のところの洋服屋でも、セレクトできていないお店もあったりするけんね。グッズ類を全て1から作れて、それをラインナップし、販売できる。モノづくりの人かというとそこともちょっとニュアンスが違うけん、本当に福岡にこれまでいなかったタイプよね。
  • 佐藤:コーヒーショップではありますが、それだけがうちのお店ではなく、コーヒーをカルチャーとして捉えてもらい、コーヒーのある生活というスタイルを打ち出している中で、セレクトショップという表現はとても嬉しいですね。ぼくはFUJITOさんが福岡に拠点を置き、こうやって長く続けていることを純粋にスゴいと思っています。以前、アパレル業界に身を置いていたので、アパレルの難しさは少しよくわかっているつもりです。特にメンズだ と本当に稀有な存在ですから。今のご時世、東京発でも難しいんじゃないですか。
  • 藤戸:まあ、難しさという面はどんな業界でもありますからね。それを踏まえても、佐藤さんはシーンをしっかり切り取って形にできる人。純度の高い刺激を、時代にマッチングした形で表現する。自分が充分にできていないところなので素直に尊敬できますよ。
  • 佐藤:自分がほしいものを作っても売れませんからね。今、どんなものがほしいんだろうか。それはどういうスタイルが適しているのか。それは十二分に考えています。
  • 藤戸:そがんよね。うちでも自分が展示会で強く推すほど売れないという不思議な方程式があって。「俺が、俺が」というこちら側からの打ち出しが強ければ強いほど、お客さんは離れていくような。
  • 佐藤:ぼくも自分がほしいものを作るというような発想はあまりないですね。だからこそ、コラボレーションの相手は慎重に選ぶようにしています。例えば、HIGHTIDEさんと協力して作ったポーチの場合、みんながほしそうなモノが先にあり、そこにはリスペクトがあります。餅は餅屋。自分がなんでもしようと思うと時間が掛かりすぎますし、今の時代に合いません。すでに良いものがあれば活用する、利用させてもらう、それでいいんじゃないかというように柔軟に考えています。あとは、お互いにウィンウィンであることも絶対条件ですね。どちらか片方だけが得をする、損をするというのは意味がありませんから。
  • 藤戸:そう考えるとバランス感覚よね。HIGHTIDEのステーショナリーも、すごく普通やもん。これは悪い意味ではなくって、日常の中で自然に手に取れるものって、作るのが難しいっちゃん。洋服でもそうで、普通、しかもついつい選んでしまう普通って、作ろうと思うととんでもなく大変。究極のバランス感覚やなか。
  • 棟廣:そうですね、良いものを作ろうと思うと、ついつい力んでしまいますから。その余計な力が抜け落ちたくらいの、ちょうど良い頃合いを推し量るのが最も苦労する部分ですよね。
  • 佐藤:そして、この麺も、究極のバランスということになりますね。

佐藤さんがスッと手を伸ばした先には、できたての「肉 抜き」が置かれていた。
これもほかのメニュー同様、名称だけではどんな料理なのかが皆目見当がつかない。
これは牛肉の煮込み料理で、肉うどんのうどん抜きのような、
出汁と肉を純粋に味わう一品だ。
これに追加麺という形で麺を組み合わせ、肉 抜きを酒のアテとして楽しみつつ、
つけ麺という味わい方もできる。
つどいの麺料理はどれも単純な麺料理というだけで終わらせない
サービス精神が盛り込んであるのだ。

肉抜き
「初めて、汁なしのアレの本格仕様を食べた時のことは今でも覚えていますよ。ああ、なるほどと思って。見た瞬間にやられてしまいました。」
  • 棟廣:初めて、汁なしのアレの本格仕様を食べた時のことは今でも覚えていますよ。ああ、なるほどと思って。見た瞬間にやられてしまいました。
  • 佐藤:ぼくも汁なしのアレを食べて、すごいなと思いましたね。味云々よりも感動、すごいという衝撃が先に来ました。なんせメニューの名前を見ても見当がつきませんし、そんな突き放された感じからの、まさかのビジュアルだったもので、これは忘れられませんよね。
  • 藤戸:結局、ギュウちゃん的にも、そういう意味深なメニューにしているから、それを説明しないといけない。店側とすると実は面倒で、大変だと思うけど、そういうやりとりまで含めて、一つのエンターテインメントなんじゃなかかなあ。
  • 佐藤:うちの店でもそうなんですが、おいしいコーヒーには限界があると思っています。もちろんそういうコーヒーを目指して追求していきますが、あくまで嗜好品で、飲む人それぞれの趣味嗜好が大きく関係しますから。自分の味というものがしっかりあって、その上で、周辺まで含めたスタイルでお客さんに届けるのがNO COFFEE。うちの店も、バランスが重要ですね。
  • 藤戸:そうそう、だから洋服も同じで、嗜好品だと思って、良いものを求める人に届けば、それでよかけんね。そうやって良いものを買うことで、その作り手さんを応援する。それをシンプルに続けていくだけ。それは仲良しこよしとは違うよね。

「つどい」で過ごした小一時間は、まるでマボロシのようだった。会話は様々な話題によって繰り広げられた。このブラックホールのような、気持ち良い雑多によって構築されたこの空間は、言葉を吸い込む。そして本質だけを後に残してくれる。福岡のカルチャーがどこから生まれているか。そのことに明確な答えはないかもしれない。ただ、「つどい」で流れる時間は、きっとその一端であるように思える。

「つどい」ゆかりのグッズも、つどいで流れる時間の中から生まれている。つどいのファサードに掲げてあるサインにギュウさんが抜擢したイラストレーター・NONCHELEEEさんの描き下ろしによる作品をあしらうオリジナル丼、Tシャツ、トートバッグに加え、ミニサイズの提灯などバラエティ豊かな内容だ。NONCHELEEEさんもまた、つどいの常連客の一人。場がつなぎ、生まれたつどいグッズ、ぜひ手にとってみてほしい。

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Shop Info-店舗情報-

店舗イメージ

つどい

福岡市中央区薬院3-7-30 新川コテージ103
TEL なし
営業時間 21:00〜深夜2:00
定休 日曜

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